ピーク・エンド・ラバーズ


壁に預けていた背中を起こして、津山くんがこちらに歩み寄ってくる。

半ば助けを求める思いで芽依を見やると、彼女は珍しく神妙な顔をして私の肩に手を置いた。


「芽依、」

「ちゃんと話した方がいいよ。……お互いのためにも」


帰り気を付けてね、と最後に気遣いを付け足し、芽依がケースケくんに視線を移す。二人は黙ったまま連れ立って歩き出した。
その背中を引き留めたい衝動に駆られたけれど、この状況でさすがにそれはできない。私は唇を噛んで俯いた。


「加夏ちゃん、ごめん」


すっかり芽依とケースケくんの気配がなくなってから、津山くんが切り出した。
見なくても彼が許しを請うような表情をしているのは分かる。ひたすらに地面を見つめたまま、私は口を開いた。


「……ごめんって、何が?」


まるで拗ねた子供みたいな声が出た。自分も大概面倒だな、とうんざりしながらも、取り繕う余裕はない。


「え――と、俺が何かしたから、怒ってるんだよね?」

「は、」

「俺のせいでごめん。でも、連絡つかないと心配になるから……」

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