ピーク・エンド・ラバーズ
たまらず彼の顔を見上げた。一体どんな表情で物を言っているのかと、確かめたくなる。
しかし予想と大して相違ない。津山くんは情けなく眉尻を下げて、いかにも困り切っているといった様子で。少し、不服そうにしながら。
「……津山くんさ、いま私に対して『何で』謝ってるのか、自分で分かんないの?」
俺が何かしたから、怒ってるんだよね?
怒っている私も理不尽だ、というニュアンスが絶妙に混じったその言い草に、かちんときた。
おおもとを辿れば飲み会でのことが原因なのだけれど、それに関しては正直さほど怒っていない。むしろ、その後のしつこい連絡に嫌気がさしたくらいだ。
それなのに、いま彼から放たれた言葉で完全に火がついてしまう。
「それ、ただ私の機嫌取りたいだけじゃん。よく分かんないけど、とりあえず謝っとけばいいかって、そんな感じなんでしょ」
「違う、」
「何が違うの? 全然分かってないじゃん」
津山くんは前からそういうところがある。ごめんってすぐに謝るくせに、「何が」ごめんなのか、全く理解していない。
私に嫌われるのが怖いから? 自分を悪者にしたくないから? どっちにせよ、八方美人でい続けたい津山岬の悪い癖が出ていると思う。
「そんなんで、よく私に今まで文句言えたね」