ピーク・エンド・ラバーズ
男の人に話しかけられてた、とか、俺といる時あんまり笑わないね、とか。
当たり前だ。笑えるか、ばか。あんたの周りにいっつも可愛い女の子がいて、私は嫌でもそれが目に入って、ずっとずっと、平気だとでも思ってるのか。
学校ですれ違う時、女の子と楽しそうにいつも笑ってて。わざわざバイト先にまで押しかけて、綺麗な子と仲良く隣に座ってるところを見せつけられて。挙句の果てに、飲み会でも普通に絡まれてて。
なに、なんなの。嫌がらせなの。
私は必死に心の奥にしまい込んで蓋をして、やきもちも不満も何もかも、わけが分からなくなりそうなのに。
津山岬の彼女として、精一杯、余裕そうな女を演じることへのプライドを、ただそれだけを守ってきたのに。
「津山くんも人のこと言えないじゃん。散々女の子と話しておいてさ、」
ずるい。悔しい。私ばかりがいつも恥ずかしくて情けない。
津山くんは色んな女の子を知ってる。キスもデートもお手の物で、きっと手を繋ぐくらい、どうってことないんだろう。
でも、私は。私は津山くんしか知らないから、それが時折本当に辛くなる。
私にとって心臓が爆発するくらい緊張することも、津山くんにとってはほんの戯れでしかない。簡単に手をさらって、笑って、それが「経験値」なのだと、毎回思い知らされる。
そのくせ私の心臓をくすぐるのは上手なんだから、もうどうしようもないのだ。
「津山くんだって……」