ピーク・エンド・ラバーズ
もっと言ってやりたい。文句をぶつけてやりたい。津山くんのくせに、くせに、くせに。
どれだけ頭の中で文章を組み立てても、喉の奥に詰まって出てこなかった。さっきから目頭が熱くて、鼻がつんとする。津山くんの輪郭がぼやける。
全然分かってないよ、ばか。
こんなに腹が立って気に食わないのに、機嫌を直してくれるのは津山くんしかいないんだよ。
「加夏ちゃん……」
津山くんが一歩、二歩と近付いてくる。彼の手が伸びてくる気配がして、私は身を捩った。
「触ん、ないで」
「え、」
「そういうの、いらない」
優しくされたら結局許してしまう。絆されてしまう。
今までため込んできたものが零れて、思考がぐちゃぐちゃだった。外でみっともなく泣いている自分の方がやっぱり下手くそで、彼には永遠に敵わない。
こんなことうじうじずっと考えなきゃいけないのかな。津山くんと付き合ってたら、これから色んな女の子と自分を比べて落ち込んだり惨めになったりするのかな。
恋ってそんな感じだっけ? そんなに面倒で悲しくて疲れるものだっけ?
もういいや、もうよくない? 好きより疲れるの方が勝ってるし、こんなんで好きとか言ってる私の方がおこがましくない?
乾いた笑いさえこみ上げてくる。どこまでも自分本位で身勝手な絶望だった。
「……距離、置きたい」