ピーク・エンド・ラバーズ
いつも快活な朱南は、栗色のショートヘアが印象的な学級委員だ。彼女と羊はこの修学旅行を機に仲を深めたようだった。
目の前でしょんぼりと肩を落とす朱南に、私は思わず口を開く。
「私、ちょっと見てくるよ」
「え? そんな、わざわざいいよ~」
「案外迷ってるだけかもしれないし、どうせ暇だから。二人は先にトランプでもしてて」
二人でできるのなんてスピードぐらいじゃーん、と不服そうに述べた灯は、立ち上がった私に続けた。
「もー、ほんと過保護。そういうとこだよ、お母さんって言われんの」
「灯しか言ってないでしょ……」
別に羊のことだけが気がかりだったわけではなく、朱南の寂しそうな顔を見ていると、黙って座っているのも落ち着かなかっただけだ。
部屋を出て廊下を歩いていく。時々クラスの男子とすれ違うことはあったものの、羊の姿は見当たらない。
一体どこまで行ったんだろう、と肩を竦めた時だった。
「お、西本さん。やっほー」
ちょうどロビーに差し掛かったところで、前方から片手を挙げ近付いてくる人影が一つ。
自分自身、やっほー、と返すキャラではないし、彼とそこまで仲は良くないと思う。小走りで距離を詰め、私は開口一番、状況説明を行った。
「津山くん、羊のこと見なかった? さっき部屋出てって、結構経つんだけど戻ってこなくて」