ピーク・エンド・ラバーズ



「結局さー、昨日どうだったの。ちゃんと話せた?」


翌日、講義の合間に芽依が尋ねてきた。彼女は私の返事を聞く前に「あ、そういえば」と声色を変える。


「ケースケがごめんって言ってたわ。なんかー、空気悪くしちゃったの気にしてるみたいよ?」


まあ自分で言えって感じだけどね、と肩を竦める芽依に、私は首を振った。
彼に謝られるようなことは何もない。むしろこちらのゴタゴタに巻き込んでしまって、申し訳なさまである。


「……しばらく、離れることにした」


一つ前の発言に答えようと、正直に打ち明ける。
芽依は気怠そうについていた頬杖をやめ、「まじ?」と眉をひそめた。


「津山氏になんか言われたん? ぶっ飛ばしに行くけど」

「だ、大丈夫。普通に、私がそうしたかっただけ」


昨日の様子からして、津山くんが納得していないのは明白だ。
でも意外なことに、昨晩から今朝にかけて一つも連絡は来ておらず、彼なりに私の意見を尊重してくれたんだろうか、と思い始めたところだった。


「ふうん……なんか、そうなるとは思ってなかったわ。経験上ってか、あくまで私の話で言うけど、拗れると元に戻すの大変だよ。あんまりずるずる延ばさない方がいいと思う」

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