ピーク・エンド・ラバーズ
好きという気持ちに「大きい」も「小さい」もないと、そう聞いた。
それでも、津山くんから貰っていた気持ちに、私の気持ちは全然つり合っていないと思うのだ。
私は本当に、津山くんのことが好きだった? 同情ではなくて? 返報性の法則じゃなくて?
考えれば考えるほど泥沼で、分からなくなっていく。きっと、今までさぼっていたツケが回ってきたのだ。自分の気持ちにも、津山くんの気持ちにも、向き合うのを逃げ続けてきた怠惰が。
「ちょっと、正直いま津山くんのこと、好きって言えるか分かんなくなってきて……こんな感じで一緒にい続けるのも、悪い気がするから」
せめてその線引きくらいはしなければと思った。
芽依は数秒私の顔をただじっと見つめて、それから口角を上げる。
「そーゆーことなら、私は遠慮なく加夏のこと独り占めするけどね。気ぃ済むまで考えればいーんじゃない?」
「……うん」
その日はいつもなら、津山くんと一緒に帰っているはずだった。私も少しだけ、迎えに来るんじゃないかと思ったりもした。
けれども、メッセージは届かない。彼の姿も見えない。そこでようやく、私は「自分事」として捉えられたような気がした。