ピーク・エンド・ラバーズ


問われて視線を移し、コート内で男子に交じり談笑している芽依を指さす。
ケースケくんは「ああ」と頷いて、私に顔を向けた。


「……あのさ。こないだ、色々ごめん。俺がとやかく言うことじゃなかったわ」


律義に謝りに来てくれたらしい。もう済んだことだと思っていたので、少し驚いてしまった。
ううん、と即座に否定してから、私は口を開く。


「ケースケくんが言ってくれなかったら、多分私ずっとあのままだったと思う」

「あれから岬と会ってないって、ほんと?」

「うん」


まじかあ、と項垂れた彼が、自身の髪をがしがしと掻き回した。


「それ、俺のせいじゃんね」

「いや、そうじゃなくて……会わないって決めたのは私だから」

「うーん……」


なおも唸り続けるケースケくんは、「ごめん!」と唐突に背中を伸ばした。すぐにばつの悪そうな顔になったかと思えば、目を伏せて話し出す。


「実は……一昨日、岬の家に行ったんだよね。いつも割と一緒に講義受けてんだけど、最近学校来ないからさ。連絡もつかないし」

< 146 / 275 >

この作品をシェア

pagetop