ピーク・エンド・ラバーズ
彼の頭を持ち上げるように手で支え、軽く上体を起こす。
おずおずと口をつけた彼の様子からして、摂取する意思はあるらしい。飲みやすいようにペットボトルを少し傾けて、流し込んでやる。
「ゼリー買ってきたけどいる?」
袋を漁りながら問うた私に、津山くんは眉尻を下げ、ごめん、と唇を動かした。
「……あんまり、いらないかも」
「何か食べたいものある?」
「いや……」
食欲はなし、と。それでも何か食べた方がいいだろう。
彼に許可を取って冷蔵庫の中を見せてもらい、しばらく考え込む。ご飯と卵はあるから、玉子粥なら作れそうだ。お粥は作ったことがないけれど、ネットに頼ればまあどうにかなるはず。
「津山くん、キッチン借りるね」
手早く髪をまとめて、鍋に水とご飯を入れてから火にかける。しばらく煮てだしの素と卵を加えたら、匂いも見た目もそれっぽくなってきた。
白い器を拝借して、それに盛り付ける。湯気がふわりと舞った。
それを持って戻ると津山くんは少し眠たそうに瞼を薄く開いていて、私にゆっくり視線を移し、目尻を和ませた。
「お粥作ったんだけど、どうかな。ていうか私も食べるから、津山くんも食べて」