ピーク・エンド・ラバーズ
ちゃっかり二人分作っていた図々しさは許して欲しい。そろそろ夕飯時だし、バイト終わりだし、お腹が空いていたのだ。
「うん。……ありがと」
半ば強制的に押し付けたけれど、津山くんは静かに頷いて、器を受け取った。のっそり起き上がり、湯気が立ち上る様をじっと見つめている。
一応味見をしたとはいえ不安になって、私は彼より先に一口含んだ。
それを見て津山くんも「いただきます」と、か細い声で食べ始める。
「……加夏ちゃん」
「なに?」
「美味しい」
こちらを凝視して真顔で伝えてくるものだから、少し面食らってしまった。
そっか、と私が返すと、津山くんは更に一口食べて飲み込み、また「美味しい」と言う。
「全部食べれそう?」
「うん。美味しいから、大丈夫」
「食べたら寝た方がいいよ」
美味しいのはもう分かったから、それ以上は勘弁して欲しい。気恥ずかしいし、そこまで何度も言われてしまうとお世辞に聞こえる。
津山くんは突然手を止めて、不安げに私を見やった。
「……俺が寝たら、帰るの?」
帰って欲しくない、というニュアンスが滲んでいるのは嫌でも分かったけれど、私だって津山くんの体調を確認できたらすぐに帰るつもりだったのだ。
質問には答えず、私は鞄からファイルを取り出した。
「これ、ケースケくんから」