ピーク・エンド・ラバーズ
もはや分厚くなったレジュメの束を手渡し、何となく気まずくて目を逸らす。
津山くんはそれを受け取って、やっぱり、と小さく零した。
「やっぱ、ケースケから言われて来たんだ」
「うん、まあ」
「本当は来たくなかった?」
急に核心をつくようなことを言われてしまい、息が詰まる。ゆっくり顔を上げると、寂しそうに微笑む津山くんがいた。
「ケースケから連絡来て……加夏ちゃんが今日俺ん家来るっていうから、突然何の冗談だよって思ったけど……」
かた、と脇のテーブルに器を置いて、彼が息を吐く。
「本当に来てくれると思わなかった。インターホン鳴って、まさかって……まさか来るわけないよなって、でももしかしたらって思って、そしたら、ほんとに」
「……津山くん」
「だけど、来たくなかったんでしょ。帰んの早すぎ……もうちょっと待ってくれたって良かったじゃん」
苦笑から、次第に詰るような口調に変わっていく。津山くんは自身の前髪をくしゃりと掴んで、私の目を射抜いた。
「俺、ずっと考えてたのに……飯もバイトも学校もどうでもよくなるくらい、ずっと……ずっと、どうしたら加夏ちゃんが許してくれんのか考えて、寝れなくて」