ピーク・エンド・ラバーズ


彼の瞳は酷く空虚だった。ただ私をじっと見つめて、穴が開くくらい見つめて、私の薄っぺらい心の中を覗き込まれているようで怖かった。


「でも、加夏ちゃんは俺のこと、どうだっていいもんね」

「違っ、」

「分かるよ。分かってる。今だってただの病人の看病くらいにしか思ってないんでしょ」


どきりと心臓が跳ねる。
図星とまではいかないまでも、私が津山くんと会って冷静でいられたのは、看病に集中していたからだ。

未だ結論を出せずにうじうじとしている自分の考えまで見透かされてしまうのではないかと、どこかで怯えていた。

巣食うような目で、津山くんが薄く笑う。


「――加夏ちゃんは俺のこと、全然好きじゃないもんね」


瞬間、全身に鳥肌が立った。たまらず反射的に立ち上がる。


「……帰る」

「え、」


バレた、と本能的に思った。
いや、確かに私は彼を好きだったのだ。そのせいで悩んだり落ち込んだりしたはずで。

でも、なぜか、なぜだろう。その時、彼の求めているものを、私は持ち合わせていない、あげることができないと思った。
津山くんみたいに、「好き」に日常生活まで振り回されるような大きい気持ちを、質量を、私は自分の中のどこを探したって見つかりっこなかった。


「待って!」

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