ピーク・エンド・ラバーズ
食い気味に質問を重ねれば、彼の視線が下がった。どことなく困ったように、うろうろとさ迷っている。
その表情に珍しく陰りが見えたから、やっぱり聞かない方が良かったかな、と罪悪感が生まれた。
「そーだね。彼女かな」
ぱっと顔を上げたその時の津山くんの笑顔は、何とも空虚で。明るい髪色も、耳朶に二つ空いたピアスも、なぜだか酷く寂しそうに映った。
「そっか。……あのさ、ちょっと聞きたいんだけど」
彼の心に土足で踏み入ってしまった気がしてならなかった。だからといって、ここで謝るのも違う。
私は逡巡しながらも、自分のことを同等にさらけ出すことにした。
「カップルって、どれくらいでキスするのが普通なの?」
「えっ?」
きょとん、という効果音が相応しいくらいの、気の抜けた声だった。津山くんが呆然と私を見ている。
「さっき、羊にそうやって聞かれてさ。でも私、経験ないから誤魔化して答えちゃったんだよね。だから有識者の津山くんに聞いてみようかなと思ったんだけど」
嘘ではない。本当に真剣に悩んでいる。それを伝えたくて、顎に手を当て神妙に唸ってみる。
馬鹿にされてもおあいこだな、と思っていたのに、津山くんはそうしなかった。ただただ呆気に取られた様子である。
「そういうのって、普通男子に聞かなくない?」
「ええ……でも周りにこんなこと聞ける人いないし」