ピーク・エンド・ラバーズ
分かりやすく甘えられて、顔が火照った。遠慮をしなくなった津山くんは、破壊力がありすぎる。
「な……に、言ってるの。帰んないって言ったじゃん」
「そーじゃなくて。いま、ここで、もっとくっついてたいの」
「はあ……!? 今の今まで散々、」
「足りない。ずっと我慢してた分、全然足りてないよ」
愛おしそうに見つめてくる視線が、じりじりと私を焦がしていく。
「ま――待って、ほんと、今はだめ」
「何で?」
「……もう、さっきので、いっぱいいっぱいだから……」
あんなに近い距離でハグまでしたのに、何が足りないんだろう。彼から与えられる甘さへの耐性がない分、いま手を繋いでいるだけでも心臓が壊れてしまいそうだった。
「今日はもうだめなの?」
「……うん」
「恥ずかしい?」
「うん」
そっか、と引き下がった彼は、それでもどことなく嬉しそうである。ちょっと悔しくて気に食わなくて、私は顔を背けた。
「津山くんは慣れてるから、普通にできちゃうけど……私は、無理なの」
「……え、」
「すぐそういう感じの雰囲気になるの、……す、好きじゃない。から、あんまり急にはしないで」