ピーク・エンド・ラバーズ
正直に申告すると、沈黙が落ちる。
加夏ちゃん、と呼ばれて、ゆっくり顔を上げた。
「今まで彼氏いたこと、ある?」
「は? ないけど」
「俺が初めて?」
「だから、そう言ってる……」
「そっか。分かった」
彼が手を離す。熱と鼓動が少しだけおさまって、ほっとした――のも束の間、今度は小指だけさらわれて、彼のものと絡まる。
「今まで俺と手繋ぐの嫌だったのって、恥ずかしいから?」
「……嫌じゃないけど、普通に、見られたら恥ずかしいじゃん」
それに、緊張してどうにもならなくなる。心臓に負担をかけてまで繋ぎたいとは、正直思わなかった。
「うん、ごめん。……もう加夏ちゃんが嫌なことしない。約束」
手をぶらりとさせたまま、低い位置で指切りをする。
今度はあっさりと指が解けて、津山くんは「あとは?」と首を傾げた。
「もっと我儘言って。俺の直して欲しいとこ、教えて」
「……津山くんは、」
「うん」
「津山くんは、お酒飲まない方がいいと思う」
だって、すごくふわふわして頼りなくなっちゃうから。女の子に好き勝手されても抵抗できないんじゃないかってくらい、無防備だった。
「あー……いや、ほんと、まじであれはごめん。もうほんとにごめん」