ピーク・エンド・ラバーズ
Weak Point Sharers

1



「まあなんてゆーか、良かったね? 拗れる前に戻れて」


津山くんとの一部始終を伝えた後の芽依の感想はそれだった。
思いのほかあっさりと片付けられてしまって、こちらとしては少し拍子抜けだ。


「いやーだって正直、別れないと思ってたし。ていうか加夏、気付いてる? いま私に話してくれたの、全部惚気だから」

「なっ、」

「まあいーよ。加夏の可愛い顔に免じて許すわ」


まさかの逆襲に遭ってしまい、言葉を詰まらせたまま固まる。
ほら出るよ、と立ち上がった芽依は、私の腕を引っ張り上げた。


「今日も津山氏と帰るんでしょー? 早く行ってやらないと可哀想だぞ」


慌ててトートバッグを掴み、芽依に引き摺られるようにして講義室を出る。窓の外はじっとりと湿度が高く、今にも雨が降り出しそうだ。

一階まで下り切ったところで、壁にもたれかかりながら人混みに目を滑らせている「彼」を見つける。なぜだか無性に走り出したくなるような、くすぐったい気持ちが胸中を満たした。さすがに実行には移さないけれど。


「津山くん」


近付いていって声を掛ければ、弾かれたように彼が振り返った。途端に表情を和らげ、その唇が「加夏ちゃん」と動く。


「全然気づかなかった。今日そっちの階段から来たの?」

「うん。混んでたから」

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