ピーク・エンド・ラバーズ



「加夏っち、そういえばもう新しいバイトくんと会った?」


土曜日の従業員室にて、退勤時間が同じだった栞さんにそんな話題を提供された。
いえ、と短く否定して、結んでいた髪を解く。

最近新しくバイト仲間が増えたのは知っていた。その影響もあってか、土曜日は夕方までの勤務で済むようになったので、密かに感謝している。


「大学一年って言ってたから、加夏っちと同い年だよ。普通にいい子」

「そうなんですか」


同年代なら比較的話しやすいだろうし、シフトが被っても特に問題なさそうだ。人に何かを教えるという作業も、実は結構好きだったりする。

栞さんはこのあと友達と落ち合ってご飯に行くそうで、しばらくここで時間を潰すとのことだった。
じゃあお先に失礼します、と会釈をしてドアを開ける。

裏口から出て階段を下っていると、下から男の子が一人、上がってくるところだった。恐らくバイトの誰かだろう。しかし、見覚えのないシルエットだ。もしかして噂をするとなんとやら、新入りくんかもしれない。

第一印象は大切だ。自分は愛想がないのだから、誤解を与えないようにせめて明るく挨拶を――と、そこまで思考を巡らせていた時だった。
不意に顔を上げた彼は、私を見るなり足を止める。その目が少しずつ見開かれていき、瞬間、私もまた呼吸を忘れていた。


「……西本?」

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