ピーク・エンド・ラバーズ
熱を含んだ瞳が、甘いトーンで確かめてくる。
そうだよ、ばか。文句あるのか。嬉しそうにしてるけど、私は気が気じゃないよ。
でも、そんなことを言えそうにもなくて、小さく頷くのが精一杯だった。
「……やば、」
思わず、といった様子で零れた独り言のようなそれに、顔を上げる。
津山くんは耳まで真っ赤になりながら、口元を手の甲で押さえた。
「どーしよ。嬉しすぎてにやけ止まんない」
きゅう、と心臓が少し、苦しくなった。
津山くんが案外、赤面症だってこと。あの子は絶対に知らないだろうな。
……絶対に、教えたくないな。
「加夏ちゃんの髪、さらさらだね」
彼の手が伸びてきて、私の毛先を弄ぶ。
「……ふわふわじゃなくて、俺は、さらさらが好きだよ」
「え、な、」
「俺の彼女が、一番、可愛い」
いちばん。その単語をわざとらしく区切って、津山くんは噛み締めるように言った。
「もー……戻ったらすぐ言う、さっきの俺の彼女って、みんなに言う……」
「そ、……そんなわざわざいいよ」
「やだ。言いたい」
出た、駄々っ子。でも今日は、私の方が我儘だったから、人のこと言えないや。