ピーク・エンド・ラバーズ


どもりながらも首を縦に振れば、相手が大袈裟に顔をしかめる。


「それ、嘘なんだって。嘘告。男子が言ってた」


す、と体の芯が冷えていく。理解より先に、感性は敏感なようだった。


「もうすぐバレンタインじゃん。だから手当たり次第に告白とかしてたらしいよ。チョコ欲しかったんでしょ、まじでくだらないし最低すぎ」


つまり今そこで涙を流している子も、被害者なのだろう。あんなに可愛い子でそんな仕打ちなのだから、本当に残酷だ。


「でも相良までそんなことすると思ってなかった。三浦(みうら)畑中(はたなか)が言い出したっぽいんだけど……」


正直、何を話されても、右から左に抜けていくだけだ。
相良までそんなことすると思ってなかった。もう、本当に、その通り。相良くんは、他の男子と違うと思ってた。無神経に人を馬鹿にしたり、揶揄ったり、子供っぽいことは絶対にしないって、勝手に思ってた。


「だからさあ、言ったっしょ。OKされると思ってなくて、俺もビビったし。『ごめん嘘』って、謝ったじゃん」


教室の中央で繰り広げられている裁判。
男子の中でもヤンチャで悪ふざけばかりの三浦くんが、そんな弁解をしている。


「おはよう」

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