ピーク・エンド・ラバーズ
*
「――西本さん、聞いてる?」
目の前で呼びかけられ、我に返った。
瞬きを繰り返す私に、店長はシフト表をひらひらと掲げながら首を傾げる。
「あ、……すみません。ええと、来週の水曜日ですよね」
「そうそう。出雲の代わりに出て欲しいんだけど、どうかな」
「はい。大丈夫です」
了承の返事をすると、店長は「ほんと? 助かるよ」と苦笑した。早速シフト表に訂正の二重線を引いて、私の名前を書き込んでいるようだ。
それはそうと、ゆっくりしている場合ではない。
今日のバイトを終え、着替えに行く途中で店長に捕まってしまったのだけれど、私はまた人を待たせている。人、まあつまり、津山くんだ。
毎度申し訳ないな、という感情がないわけではなくて、しかしそれも段々と薄れてきてしまっているのが現状。どちらかというと、私も彼との帰り道を楽しみにしていた。
手早く準備を済ませ、階段を駆け下りる。
「西本!」
と、そこで突然追い縋る声が響いた。
声の主は分かっている。ここ最近、同じ時間帯で働くことも少なくないから、だいぶ耐性はついてきた。
「……何?」
「――西本さん、聞いてる?」
目の前で呼びかけられ、我に返った。
瞬きを繰り返す私に、店長はシフト表をひらひらと掲げながら首を傾げる。
「あ、……すみません。ええと、来週の水曜日ですよね」
「そうそう。出雲の代わりに出て欲しいんだけど、どうかな」
「はい。大丈夫です」
了承の返事をすると、店長は「ほんと? 助かるよ」と苦笑した。早速シフト表に訂正の二重線を引いて、私の名前を書き込んでいるようだ。
それはそうと、ゆっくりしている場合ではない。
今日のバイトを終え、着替えに行く途中で店長に捕まってしまったのだけれど、私はまた人を待たせている。人、まあつまり、津山くんだ。
毎度申し訳ないな、という感情がないわけではなくて、しかしそれも段々と薄れてきてしまっているのが現状。どちらかというと、私も彼との帰り道を楽しみにしていた。
手早く準備を済ませ、階段を駆け下りる。
「西本!」
と、そこで突然追い縋る声が響いた。
声の主は分かっている。ここ最近、同じ時間帯で働くことも少なくないから、だいぶ耐性はついてきた。
「……何?」