ピーク・エンド・ラバーズ
ああ、最低だ。でも津山くんを好きになったことは、好きなことは、本当に本当だった。
自分は特別なんだって自惚れるのも、愛しさで胸が苦しくなるのも、津山くんを好きになって初めて知ったこと。
不甲斐ない。情けない。みっともない。今までこんなに自分を卑下したことがあっただろうか。それくらい必死で彼とぶつかったし、変わりたいと思って涙を流したのも初めてだった。
正解を探し続けてきた自分に、正解なんて自らの手で作り出せばいい、そんな結論に至らせるほど、目の前の彼は私にとって大事な人だ。
津山くんが私の腕を取る。そして唐突に歩き出した。
「え――な、なに、どこ行くの」
顔を逸らす寸前の、彼の空虚な目が忘れられない。掴まれた箇所は少し痛いくらいだ。
私の質問に、津山くんの返答はなかった。それがますます不安をあおる。
どうやら私は、一つ大きな思い違いをしていたようだ。
津山くんが強引に私の手を引くことはない。そう思っていたけれど、今の彼は強引と言う以外、何と表現すればいいのだろう。らしくない、ということだけは確かだ。
振り払う空気でもないし、振り払えそうにもない。足早に進んでいく彼に、黙って引っ張られることにした。