ピーク・エンド・ラバーズ


スマホを取り出した私に、津山くんの問いかけがぽつりと響いた。
メッセージアプリを開いて、バイト先のグループメンバーから、ある一人の名前を探す。


「ちゃんと、清算する」


宣言して、私は「相良修平(しゅうへい)」――その人に、電話を掛けた。
勢いでタップした後、離した指は震える。耳の横に心臓があるのかもしれない。それぐらい、緊張していた。


「……もしもし」


十秒ほど経ち、呼び出し音が途切れる。電波越しに聞こえた声は、存外落ち着いていた。


「西本?」


それでもやはり信じがたい気持ちはあるらしく、相手が念を押すように確かめてくる。


「……うん」


うん、と。もう一度景気づけに頷けば、沈黙が落ちた。
もう話したくない。大嫌い。そう言った手前、こちらから連絡を取るのは気まずかったけれど、清算の鍵は間違いなく私が握っているのだろう。


「どうした?」

「あの、……ごめん、こないだあんなこと言ったくせにって、感じなんだけど」


そう切り出した私に、事務連絡でも緊急事態でもないと察したらしい。相良くんは「ううん、いいよ」と相槌を打った。


「やっぱり、ちゃんと相良くんと話すべきだなって思って。私も、吹っ切れたいから」

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