ピーク・エンド・ラバーズ
*
十月三十一日。
秋の夕暮れは早い。分厚くなってきた雲から逃げるようにして、階段を上がっていく。
久しぶりに履いたローファーは爪先が傷だらけだ。紺色のスクールソックスも、しまい込んでいたものをわざわざ発掘してきた。……なぜかというと。
「いやー、やっぱり加夏はセーラー似合うわ! 正統派女子高生って感じ!」
その言葉通り、私がいま着用しているのはセーラー服に他ならない。紺色のスカートに赤のタイと、最もベーシックなデザインだ。
一方で、芽依はチェックのスカートに黒のブレザー。髪色が明るいせいで、かなり素行の悪そうな女子生徒に見えるけれど。
どうしてこうなったのかと問われると答えは単純明快で、お互いの高校の制服を交換したのだ。
コスプレをしたいという芽依の強い願望と、さすがに抵抗があるという私の羞恥心。足して二で割った結果である。
コスプレ用の制服ならまだしも、現役時代――といってもまだ一年前は着ていた――実際に使っていた制服なら仮装感はないだろう、と了承したのが駄目だった。
卒業、という二文字は案外しっかりと細胞に刻み込まれているらしく、さっきから人とすれ違う度に恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない。
「やっぱり着替えたいんだけど……これであの二人に会うのはちょっと」
十月三十一日。
秋の夕暮れは早い。分厚くなってきた雲から逃げるようにして、階段を上がっていく。
久しぶりに履いたローファーは爪先が傷だらけだ。紺色のスクールソックスも、しまい込んでいたものをわざわざ発掘してきた。……なぜかというと。
「いやー、やっぱり加夏はセーラー似合うわ! 正統派女子高生って感じ!」
その言葉通り、私がいま着用しているのはセーラー服に他ならない。紺色のスカートに赤のタイと、最もベーシックなデザインだ。
一方で、芽依はチェックのスカートに黒のブレザー。髪色が明るいせいで、かなり素行の悪そうな女子生徒に見えるけれど。
どうしてこうなったのかと問われると答えは単純明快で、お互いの高校の制服を交換したのだ。
コスプレをしたいという芽依の強い願望と、さすがに抵抗があるという私の羞恥心。足して二で割った結果である。
コスプレ用の制服ならまだしも、現役時代――といってもまだ一年前は着ていた――実際に使っていた制服なら仮装感はないだろう、と了承したのが駄目だった。
卒業、という二文字は案外しっかりと細胞に刻み込まれているらしく、さっきから人とすれ違う度に恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない。
「やっぱり着替えたいんだけど……これであの二人に会うのはちょっと」