ピーク・エンド・ラバーズ


今日は岬の家に集まることになっていた。各々好きなお菓子やら何やらを持ち込んで、秋の夜長を楽しもうという算段だ。


「いやいや、ここまで来たんだから無理っしょー。てか大丈夫だって、お互い様だから」


コンビニの袋を掲げた芽依が、とうとう着いてしまった彼の家のインターホンを押す。


「はー……い」


空いたドアの向こう側。少し慌てた様子で出てきた岬の声が萎む。
彼の目が見開かれるのと同時、私も彼を凝視して固まっていた。お互い様――その意味を、まさしく痛感したからだ。


「飲み物あるって聞いたからさー、食べ物買ってきたんだけど。って、おーい津山氏。聞いてる?」


芽依がひらひらと彼の眼前で手を振るも、効果はない。

岬が着ていたのは、何を隠そう学ランだった。真っ黒な生地に金色のボタン。見慣れないどころか初めて見た姿に、少なからず動揺してしまう。


「え、あ……何で、二人とも」

「あー、言ってなかったっけ。うちらも制服交換したんだよね。おっかしいなあ、ケースケには言ってあったんだけど」


へどもどと視線をさ迷わせる彼に、芽依は淡々と述べる。
なるほど、男子も男子で交換していたわけだ。芽依が言い出したのか、ケースケくんが言い出したのか、もうこの際どっちでもいいけれど。

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