ピーク・エンド・ラバーズ


そもそも、津山くんにカッコ良さとか求めてないし。
思ったことを忖度せずにそのまま伝えれば、彼は「えっ」と素っ頓狂な声を上げた。


「いきなり辛辣すぎない? 親しき仲にも礼儀ありって言うよね?」

「これくらいの冗談許してくれる仲だと思ったんだけど違う?」

「違くないけど……」


む、と不機嫌そうに顔をしかめた津山くん。やっぱり今の方が幼くて、可愛くて、ずっととっつきやすい。

だって、本当にタイプじゃないんだよなあ。と、自分の立場もわきまえずに失礼千万なことを思う。
目尻がほんの少しだけ垂れていて、鼻が小さくて、唇も薄い。笑えば人懐っこいし、しょげている顔は思わず手を貸してあげたくなるというかなんというか。


「な、なに?」


あまりにも凝視していたからか、津山くんがそう尋ねてきた。


「うーん……まあ、確かに顔はかっこいいよね。顔は」

「俺、泣いていい?」

「冗談だって」


さっきから、冗談だと言えば何でも許されるような気がしている。それを彼にも悟られたのか、津山くんはすっかりご立腹だった。

だけれど、そのまま怒ってなよ、と思う。津山くんの笑った顔しか、私はあんまり知らない。


「もう立てそう?」

「あ、うん、だいぶ楽になった。さんきゅ」

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