ピーク・エンド・ラバーズ


大袈裟にぶるぶると体を震わせてみせた灯が、歯を見せて笑う。


「加夏も、なんかすっごい大人っぽくなったねー。まあ高校の時からだけど」

「そう?」

「うん、清楚なお姉さんって感じ」


高校二年生の時に、灯に「お母さんみたい」と揶揄われたことを思い出した。三年の月日を経て、ようやく「お母さん」ではなく「お姉さん」になれたらしい。

まあでもそれは、服装のせいでもあるだろう。同窓会となればそれなりに綺麗な格好をする必要があると思って、普段大学に行く時には絶対に着ないようなニットのワンピースを選んだ。
勝手にそれを指摘されたような気がしてしまって、なんとなく気恥ずかしい。


「ん? あれって羊? 改札のとこでめっちゃきょろきょろしてるけど」


と、灯が私の背後に視線を寄越して首を傾げた。
つられてその方向を確認すると、淡いピンクのコートを着た女の子が一人。挙動からして、羊で間違いなさそうだ。


「おーい、羊。こっちこっちー」


やや声を張った灯に気が付いたのか、羊がこちらを見て頬を緩める。


「あかりちゃん……! カナちゃんも! ごめんね、遅れちゃって……」

「だいじょーぶ。うちらもさっき着いたばっかり」

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