ピーク・エンド・ラバーズ
二人で立ち上がり、体を伸ばす。
灯からメッセージが入っていて、もう終わりそうだということだった。その旨を津山くんにも伝えると、彼の表情が曇る。
「……どうしたの?」
「あ、いや……そっか、またあっち戻んなきゃだよな」
みんなと合流するには、またゾンビの蔓延るエリアを通らなければならない。きっとそう思って、彼は憂いているのだろう。
大丈夫だよ、と私は首を振った。
津山くんにホラー耐性がないと察してから、こっそり灯には告げ口してある。こっちに迎えに来てくれるらしい。
「こっち来てもらうように連絡したから。多分ホテルもね、ゾンビいるエリア通らないで帰れる道あると思う。そっちから行こう」
言いつつ彼の背中を軽く叩いてから、流石に気安く触りすぎただろうか、と後悔する。また弟と重ねてしまった。
しかしそんな私の心配とは裏腹、津山くんは「西本さんさぁ」と舐め腐った口調で話し出す。
「包容力すげえって、言われない?」
「藪から棒にどうしたの」
「いや、ほんと何から何まで……さーせん」
あーあ、可愛くない。本当に可愛くない。さーせん、とか、もういつもの津山くんに元通りだ。
「津山くんはさぁ」