ピーク・エンド・ラバーズ


視線を落とし、北川くんが自身の頭を掻く。


「あいつ、めちゃくちゃセンスあってさ。こりゃ勝てないわーって、変な嫉妬こじらせて最後の方とかちょっと避けてたし。今日も中学の同窓会と被ってたんだけど、バスケ部の奴らと会うの気が重くてこっち来ちゃったし……」


自信なさげな彼の表情を見て、数年前の記憶がフラッシュバックした。

多分、体育の授業の時だったと思う。男子はバスケをやっていて、バレーをやっていた女子の方に、ボールが転がってきたのだ。
そのボールを拾い上げたと同時に、駆け寄ってきたのが北川くんだった。


『ごめん、ありがとう』


その時、私からボールを受け取った彼の表情と、いま目の前にいる彼の表情がリンクする。
そうだ。なんだか弱々しい感じの男の子だな、と最初に若干失礼な感想を抱いてしまった記憶があった。


「……それって、北川くんがまだバスケを好きだからそう思うんじゃないのかな」


どうでも良ければ、元チームメートの顔色や機嫌を気にする必要すらない。敵わないと悟って悔しくて、悔しいのは、そのぶん本気で向き合っていたからだ。


「避けてたからとか、そんなことでケースケくんは怒る人じゃないし。まあ、少なくとも私が知る限りでは、の話だけど」

< 251 / 275 >

この作品をシェア

pagetop