ピーク・エンド・ラバーズ
私は大学生のケースケくんしか知らない。北川くんの方がきっと彼のことを理解しているだろうし、だからこそ意固地になってしまうのもよく分かる。
そういう時は、第三者が肩をもみほぐしてあげる以外、打開策はないのだろう。
「ケースケくんは、北川くんに会いたいよ。なんか、そんな気がする」
私が言った途端、北川くんが息を呑んだのが伝わってきた。
本当は彼だって会いたいはずだ。そうでないと、わざわざ私に声を掛けてくるような人ではない。
「……うん。確かに、そうだな」
ありがとう、と彼がはにかむ。それからスマホを取り出した。
「西本。啓介の連絡先送ってくれない?」
「ん? え、知らないの?」
「中学の時、スマホ持ってなかったし……それに、西本から教えてもらったって言った方が会話始めやすいかと思って」
「ああ……そっか、分かった」
北川くんと連絡先を交換して、それからケースケくんの連絡先を送る。
ケースケくんに一言断りを入れようか迷ったけれど、大丈夫だろうと判断してトーク画面を閉じた。
「まじで助かった。ありがとう」
「ちゃんと話せるといいね」
頷いた北川くんがテーブルへ戻るのを見届け、ほっと息を吐く。
ようやくゆっくりとデザートを吟味する気持ちになったので、杏仁豆腐を持って私も戻ることにした。