ピーク・エンド・ラバーズ
会場から出る間際で、彼を呼び止める声が上がる。
振り返れば、比較的髪色の明るい男子が数名。ピアスを開けている人もいたけれど、明るい髪色もピアスも、岬以上に様になっている人はいなかった。
「お、てか西本さんも一緒? え、なに? そういう感じ?」
にやにやとこちらを窺ってくる彼らに、若干辟易する。こういうノリは得意ではない。
「付き合ってるよ。……普通に」
渋々答えると、場がどよめく。普通にってなんだ、と自分の言葉選びに嫌気が差した。
「いやあ、酒弱いっつってたけどこんな弱いとは思わんかったわー。ごめんなー」
手を合わせて軽く詫びてくる男子に、「飲ませたの?」と問う。
「はは、いやアルハラはしてねーよ? 勧めただけ! ただみんな飲んでんのに、こいつだけ飲まないのつまんねえからさー」
その時の会話がいとも簡単に想像できる。
きっと岬は場の空気を壊したくなくて、仕方なく一口飲んだんだろう。周りが酔いに任せて盛り上がっていたとしたら、しつこく絡まれた可能性だって十分にある。
「……あのさ。この人、本当に弱いんだよね、お酒」
「え? ああうん、いや見たら分かるよ? すっげーよね」