ピーク・エンド・ラバーズ
へらへらと笑っているその顔を、睨みたい衝動に駆られる。
岬もかつてはそういう笑い方をする人だった。今も友達と話しているときは、へらへらしている。
でも、違う。岬は無意味に自分を薄っぺらく見せるような人間ではなかった。
時には友人を庇うためであり、時には場を盛り上げるためであり、それは全て自分の役割を理解し尽くしているからこその軽薄さなのだ。
ばかって言ってごめんね、と思う。確かにばかな時もあるけれど、彼がポンコツになるのは、大体私のせいだ。
「今回は岬が自分から飲んだってことでいいけど、それも一歩間違えたらアルハラだから。人によって限度も適量も全然違うし、本当に危ないからね」
「え、ああ……」
急に説教モードになった私に、相手は戸惑っているようだった。あるいは鬱陶しく思われているかもしれない。
「岬が優しくて、良かったね」
最後にそう付け足して、今度こそ立ち止まらずに会場を後にした。