ピーク・エンド・ラバーズ
*
結局タクシーを拾うことにした。
車内で狼谷くんに「ありがとう。助かりました」と簡素にメッセージを送信すれば、「どういたしまして」とこれまた簡素な返信がくる。
羊と灯からのメッセージにも返信して、アプリを閉じる直前に「北川くん」の名前が目に入った。ケースケくんとはきちんと話せただろうか。
岬のアパートに着き、階段にひやひやしながらも、何とか部屋まで辿りつく。
「お邪魔します。とりあえず水飲みなよ? いま持ってくるから座ってて」
道中も黙りこくっていたけれど、彼は部屋に入っても口をきかない。私の言葉が一応耳に入ってはいるらしく、ベッドに腰を下ろしていた。
水を汲んで彼のもとに戻ると、宙を見つめたまま固まっている。
「大丈夫? 水飲める?」
コップを差し出しても、岬はうんともすんとも言わない。
ひとまずテーブルにコップを置いて、彼のマフラーに手をかける。コートもそのまま脱がせてあげよう、とボタンを外していた時だった。
「……加夏ちゃん」
あ、喋った。そんな感想が浮かんだのは許してほしい。
ぼんやりと私の顔を見つめる岬に、首を傾げる。
「うん? どうしたの」
結局タクシーを拾うことにした。
車内で狼谷くんに「ありがとう。助かりました」と簡素にメッセージを送信すれば、「どういたしまして」とこれまた簡素な返信がくる。
羊と灯からのメッセージにも返信して、アプリを閉じる直前に「北川くん」の名前が目に入った。ケースケくんとはきちんと話せただろうか。
岬のアパートに着き、階段にひやひやしながらも、何とか部屋まで辿りつく。
「お邪魔します。とりあえず水飲みなよ? いま持ってくるから座ってて」
道中も黙りこくっていたけれど、彼は部屋に入っても口をきかない。私の言葉が一応耳に入ってはいるらしく、ベッドに腰を下ろしていた。
水を汲んで彼のもとに戻ると、宙を見つめたまま固まっている。
「大丈夫? 水飲める?」
コップを差し出しても、岬はうんともすんとも言わない。
ひとまずテーブルにコップを置いて、彼のマフラーに手をかける。コートもそのまま脱がせてあげよう、とボタンを外していた時だった。
「……加夏ちゃん」
あ、喋った。そんな感想が浮かんだのは許してほしい。
ぼんやりと私の顔を見つめる岬に、首を傾げる。
「うん? どうしたの」