ピーク・エンド・ラバーズ
一体、急にどうしたというのだろう。私の言葉を遮るのも、一方的に質問を寄越してくるのも珍しいことだ。
こんな彼を見るのは相良くんに会いに行くと言った時以来で、そこまで思い至ったと同時、もしかしたら不安になっているのかもしれないなと思った。
ポケットからスマホを取り出して、ロックを解除する。メッセージアプリを開いてから、岬にも画面が見えるように掲げた。
「ほら、証拠」
トーク画面には、ケースケくんと無事に繋がれたという旨のメッセージが表示されている。既読にしてしまったので、スタンプを送信しておいた。
しかし、岬はじっと画面を見つめたまま表情を変えない。
小さくため息をついて、私は目を伏せた。
「別にやましいこと何にもないから。そんなに不安なら、勝手に見ていいよ」
言いつつスマホを彼の方に差し出しても、受け取る気配はないようだ。
ただ単に酔っぱらって妙なことを言っているだけなのだろうか。それならそれで、さっさと水を飲んで寝た方がいいと思うけれど。
「……消して」
ぽつりと、そんな呟きが落ちた。
「え?」
「そいつの連絡先、消して」
「な、何で」
「だって、もう用済んだでしょ?」