ピーク・エンド・ラバーズ
北川くん同様、狼谷くんの連絡先を削除する。
画面を確認し終えて安心したのか、岬は私の首元に顔を埋めた。彼の毛先が触れてくすぐったい。
「岬、離して」
「やだ」
「明日早いんだってば……」
文句を垂れながら彼の腕に手をかける。離してもらおうと抵抗するためだったのに、岬が私の手を取って指を絡めてきた。
「明日、中学の人と会う?」
「うん」
「男と連絡先、交換しないでね」
「うん」
「彼氏いるってちゃんと言って」
あー、もう、うるさい、めんどくさい。
スマホのカメラを起動して、岬と自分を写す。シャッターを切った。
「……え、なに?」
たったいま撮った、決して写りがいいとは言えないツーショットを、アイコンに設定する。
彼氏との写真を分かりやすく提示しておけば、さすがに男の人からどうこうというものはないだろう。
「なにって……浮気するって思われてるの心外だから、証明?」
つと彼に視線を寄越せば、嬉しそうな瞳とぶつかる。
今の写真俺にも送って、と岬が言うので、どうせならもう一度ちゃんと撮ることにした。
客観的でも主観的でも、何でもいい。
岬の愛は時々重いし面倒だ。その重量に心地よさを感じている私もきっと、大概なのだから。