ピーク・エンド・ラバーズ
ep.3 Then and Now
ファーストキスはレモンの味って言ったやつ誰だ、出てこい。
そんな八つ当たりをしたくなるほどには、緊張で頭が真っ白だった。
中学二年生の夏、俺は初めての彼女と初めてのキスをした。
テニス部の可愛い一つ上の先輩。走るたびにポニーテールがゆらゆら揺れて、その毛先を馬鹿みたいに目で追いかけていた。
茶目っ気があって、笑った顔が輝いていて、天真爛漫。先輩のことを狙っている男子は多かったけれど、当たって砕けろ精神で夏祭りに誘ったらまさかのOKで、浴衣姿の先輩が可愛すぎて告白したらまさかのOKで、きっとここで一生分の運は使い果たした。
レモンの味なんて、多分、いや絶対にするわけがないのだ。正直キスに味とかないし、もしあったとしてもそんなことを気にしている余裕すらない。
高嶺の花だった先輩を射止めた俺は、校内で一躍有名人になった。
「おい岬ぃ、聞いたぞ。カンナ先輩に告るとか、お前まじでやべーな」
「でも良かったじゃん、OKもらえて。マサキ先輩がカンナ先輩のこと好きとか言ってたけどさー、あんな王子様とくっついたって面白くねえじゃん!」
「そーそー。カンナ先輩も、岬みたいな大人しいやつの方が好きだったってこと」