ピーク・エンド・ラバーズ
友達が好き勝手言っているのを、半笑いで受け流す。
大人しいやつ――まあ、確かに。俺の性格を表すのに、それが一番適切だろう。
やっぱり自分は王子様になんてなれるわけがない。教室の隅で大人しくしているのが似合っている。
悪気のない言葉にほんの少しだけ胸を痛めている自分がいて、気分は沈んだ。
カンナ先輩は可愛い。それは共通認識であり、きっと彼女も自分のポテンシャルを理解している。
彼女がわがままを言えば大体叶うし、まず周りが放っておかない。俺だって、カンナ先輩が可愛らしく口を尖らせれば、何でも言うことを聞くと思う。
でも、さすがに。
「ねえ、岬。別れない?」
付き合ってから三か月後に投げかけられたその提案には、頷けなかった。
色気も何もないファーストフード店。いつもならおしゃれなドリンクの売っているカフェに行きたがるのに、今日は一体どうしたんだろう、と最初から訝しんではいた。
あまりにも突然で、世間話の一環のように切り出すから、俺の耳がおかしくなったんだろうかと錯覚する。
「え――ど、どうして、ですか」
かろうじてそんな薄っぺらい問いを絞り出した俺に、カンナ先輩はあっけらかんとした様子で。
「もう岬のこと、あんまり好きじゃなくなっちゃった」