ピーク・エンド・ラバーズ
俺にとっては死刑宣告だった。
意味を分かりたくない、否、その瞬間にはあまり理解できていなくて、それでも指先から体温が逃げていく。
「だから別れない? このまま付き合っても、楽しくないかなあって思うんだよね」
勘違いをしてはいけない。これは選択を迫られているのではなくて、肯定を求められているのだ。
わがままを言うように、おねだりをするように。カンナ先輩は普段のトーンで、口を尖らせる。
そして俺は、彼女の言葉を否定できるわけがない。
「……分かりました」
声が震えないように、喉にぐっと力を込める。泣きそうだ、と思った時には既に遅くて、視界が霞み始めていた。
「あの、カンナ先輩」
「ん?」
「理由を教えてくれませんか。どうして俺と付き合ってくれたのか、どうして俺のこと……好きじゃなくなったのか」
今後に生かしたいので、と付け足して強がってみたけれど、今後のことなんて考えたくもない。カンナ先輩に捨てられたら、俺はこのあと間違いなく屍だ。
うーん、と小さく唸った彼女は、指先をくるくると弄びながら答える。
「ほら、岬って優しいじゃん。あんまり怒んなさそうだし。カンナのこと、甘やかしてくれそうだなあって思ったの」