ピーク・エンド・ラバーズ



「誰かと思った。お前、そういうタイプだっけ」


高校に入ってから最初に顔を合わせた時、玄は俺を見てそう問うた。

狼谷玄――中学の頃、同じクラスになったことはあるけれど、お互いにただのクラスメートという認識だった。

髪を明るく染め、痛みに耐えながらピアスも開けて。俺は、過去の「優しくて大人しい津山岬」を卒業したはずだった。

玄に一方的につきまとったのは俺だ。前の俺と今の俺を知っていながら何も追及してこない彼に、安心感を持っていたのだと思う。


「ねえ、玄。今度いつ空いてるの~?」


正直言って、玄はモテた。女の子からの誘いが絶えなくて、彼もその誘いを断ることが滅多になくて、百戦錬磨のプレイボーイだとかなんだとか、騒がれていた気がする。


「お前、今日もデート? 女の子とっかえひっかえしてさぁ」


涼しい顔で頬杖をつく玄に、俺は軽い茶々をいれたつもりだった。
デートじゃない、と綺麗な顔をした彼が眉根を寄せる。


「はあ? 女の子と二人で遊ぶんだから、デートだろ」

「いや、別に。どうせ俺の家行ってヤるだけだし」

「…………え?」

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