ピーク・エンド・ラバーズ


ワンモアタイム、プリーズ。
分かりやすく固まった俺に、玄がため息をつく。


「何」

「何って……いやいやいやお前、もしかして今までの『お誘い』ってそういう感じだったわけ? まじ?」

「だったら何なんだよ」


何なんだよ、じゃないっすって。玄クン、俺が思ってたよりめちゃくちゃやべーやつだったんですね。本物のプレイボーイじゃん。

俺だって健全な男子高校生ですし? そういうことに興味ないわけないですし?
でもほら、まさか実際にそんなパーリーナイみたいなことやってる人がこんな身近にいると思わないじゃん?

カルチャーショックに似たような衝撃だった。いや、カルチャーショックだった。さすが百戦錬磨、格が違う。
玄がいつも淡々としているのも、冷静なのも、色気が滲み出ているのも、それが要因なのだろうか。


『岬って、必死だよね。なんかいつも余裕なさそう』


呪縛だ。俺をずっと縛り続ける呪いの言葉。
いくら変わりたくても、外見を変えても、根底を変えなければ意味はなんじゃないのか。玄みたいに余裕のある男になるには、やっぱり玄の真似をするのが一番手っ取り早いんじゃ――。


「玄」


握った拳に汗をかく。もう、戻れない。


「その子、俺に紹介してくんない?」

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