ピーク・エンド・ラバーズ
嘘つけ! と、セルフツッコミを胸中で入れるのを忘れない。
でも場を丸く収めるには玄に文化委員を担ってもらうしかないわけで、あいつと円滑にコミュニケーションが取れるのは俺くらいなわけで。
「おーい、女子の文化委員決まったか~」
先生の呼びかけに、「白さんですー!」と声が上がる。
「じゃあ白と狼谷、よろしく頼むぞ」
かくして、玄と白さんは文化委員になった。まさかこの二人が付き合うことになるなんて、この時は全く、一ミリも想像していなかったけれど。
そして――白さんの親友であるあの子に振り回されることになるなんて、更に想像していなかったし、できるわけもなかったけれど。
「いや~、長かった。ようやく報われたわぁ」
「報われたって、それ津山くんのセリフじゃなくない?」
文化祭のあと、ファミレスにて。
目の前で僅かに顔をしかめながら、西本さんがグラスに口をつける。
真面目でちょっと堅苦しくて、潔癖そう。彼女に対しての印象は、そんなものだった。
単に親友の恋路を応援し合った仲。それ以上でも以下でもない。俺が玄とつるんでいなかったら、白さんが西本さんと仲良くなかったら、あるいはどちらかが文化委員になっていなければ、彼女とこうして話すことは永遠になかったかもしれない。