ピーク・エンド・ラバーズ
そう、断じて。ちょっと、ほんのちょっとだけ可愛いとか思ってしまっただけであって、別にやましいことは何もない。
しっかりしろ、私。津山くんなんて必殺遊び人なんだから。うっかり好きになっちゃった、とか、本当にシャレにならない。女の敵。言語道断だ。
羊の誤解を解くためというよりかは、最早自分に言い聞かせる目的で言い募る。
そうしているうちに、バスは学校前の停留所に着いたようだった。
狼谷くんは毎朝バス停近くで羊のことを待っている、律義な彼氏だ。最初こそ「私の立場は? 私もいるんだけど?」と若干気まずかったけれど、二人のバカップルぶりに当てられたのか、こういうものかと慣れてしまった。
いつもの如く、バスを降りてそそくさと一人退散しようと思っていた時。
「あ、西本さん。白さんも。おはよー」
黒髪の狼谷くんと対比するように、隣には明るい茶髪の彼がいる。
ひらひらと手を振ってこちらに歩み寄ってきた津山くんに、私はどもりながらも問うた。
「な、何で? どうしたの?」
狼谷くんがいるのは分かる。というか、いない方が「今日はどうしたのかな」と不安になる。
じゃあ、一体なぜ。津山くんまでいるのだろう。
「えー、リア充の恩恵にあずかろうと思って」