ピーク・エンド・ラバーズ



学校が終わってバスに乗る。駅に着くまでの間、スマートフォンは頻繁に震えていた。


『西本さん、もう学校出た?』

『今どのあたり?』

『あと何分くらいで着きそう?』

『着いたら教えて』


バスを降りる直前に確認したら、津山くんからメッセージが大量に届いていた。いや、もちろんそれは分かっていたのだけれど、面倒で放置していたのだ。
もうそろそろ着くよ、と返せば、即座に既読になる。またメッセージが来そうなところでアプリを終了し、席から立ち上がった。

今日は終業式もとい、クリスマスイブ。
津山くんと出掛けることに了承したはいいものの、相変わらず知り合いに見つかるのだけは避けたかった。学校から一緒に帰るだなんてもってのほか。待ち合わせは街中より少し手前の駅だ。

津山くんは既に駅のコンコースにいるということだったので、中に潜って彼の姿を探す。
カップルが腕を組んで歩いていくのを何度か見送った。今日は人が多くて大変だ。

仕方なくスマホを取り出し、電話を掛ける。彼はワンコールで出た。


「西本さん? 良かった、やっと連絡取れた……今どこ?」

「ええと、コンコースだよ。津山くんがそっちにいるっていうから」

「メッセージ見てない? もう俺移動しちゃって……あ、いやそっち行くね。待ってて」

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