ピーク・エンド・ラバーズ
一方的に彼が言い残し、通話が途切れる。
履歴を確認すれば、確かに数分前、「寒いから奥のコンビニの前にしよう」とメッセージが届いていた。
津山くんがせっかちなのか、私がマイペースなのか。噛み合わないやり取りに早くも先行きが不安だ。
待っている間、小さい女の子が近くをうろうろと歩いていて、声を掛けたすぐ後に母親と思しき女性が現れる。
良かった良かった、とその子に手を振りながら呑気に思っていたら、突然後ろから肩を掴まれた。
「西本さん!」
ぎょっとして振り返ると、津山くんが息を切らして私を捕まえに来たところだ。寒暖差で鼻先が赤くなっている。
「びっくりした……そんなに急がなくても良かったのに」
「だって、急がないと……西本さん、どこ行くか分かんないんだもん」
なんだそれ。人を子供扱いしないでいただきたい。
む、と少しだけ頬を膨らませて不満をアピールする。
「私、迷子じゃないよ」
「今だってどっか行こうとしてたじゃん……」
「してないよ。あの子のお母さんが見つかったから、連れて行ってただけ」