ピーク・エンド・ラバーズ
あと十五分くらいでツリーが点灯するから、ということで、それまで待つことにした。
さっきから津山くんは、前を見るか、私を見るかの二択な気がする。
せっかくだから周りの景色をもっと楽しめばいいのにと思いながら、私は「大丈夫」と頷いた。
「でも、まだちょっと時間あるし……俺のマフラー使う?」
「いいよ。津山くんが寒いでしょ」
「いや、いま暑いからちょうどいいかな」
「何で暑いの……」
真冬日なんですが。彼の感性にやや心配になる。
「使って。なんか、見てる俺の方が寒そうで……ちょっと」
「あ、ありがと」
謎理論で言いくるめられ、渋々彼のマフラーを受け取った。
いざ首に巻いてみると、ふかふかで温かい。今日はうっかり自分のマフラーを忘れてきてしまって、実を言うとやせ我慢をしていた。
少し心の余裕が生まれて、隣の顔を窺う。
「……津山くん、寒い?」
「いや、大丈夫」
「寒いよね、絶対。震えてるもん」
「大丈夫」
この人、馬鹿なのかな。暑いとか絶対嘘だ。
「津山くん、ちょっとだけ屈める?」
「ん?」
内緒話でもされると思ったのか、私の方に耳を寄せて屈んできた彼に、「違うよ」と頭を軽く叩く。
「そうじゃなくて、これ」