ピーク・エンド・ラバーズ
マフラーを半分解いて、片端を彼の首に巻いた。自分の方は前が少しだけはだけて、冷たい空気が入ってくる。
でも、一人で呑気に温まっているよりは、こっちの方がマシな気がした。
「え、ま……待って、いいよ、西本さんが使って」
「やだ」
「やだって……」
戸惑ったように口ごもる津山くんが、私の耳元で弱音を吐く。
「待って、ほんと……何でそういうことすんの」
「だって津山くんも寒そうだったから」
「寒くないって……」
「あー、もう。動かないで。取れちゃうじゃん」
緩まった布を手繰り寄せ、彼に文句をぶつけて気を紛らわせた。そう、後悔はしているのだ。
思ったよりも距離が近くなってしまうし、よくよく考えればこれってカップルがすることじゃない? と、大反省タイムである。
「……もっと寄らないと、寒いよ」
言い訳みたいに述べて、津山くんが肩をくっつけてくる。
ごめんなさい、謝る。謝るから許して。もう恥ずかしすぎて死にそうだ。周りから「バカップルじゃん」と思われていそうで、本当に居たたまれない。
「ねえ、あの時の質問、もっかいしていい?」
「なに?」
「西本さん、彼氏いる?」
「……いたら今ここに来ないでしょ、普通」