ピーク・エンド・ラバーズ


ご名答だ。
津山くんと二人で出掛けたというのがバレたら、次の日には噂になっているだろう。だからいつも周囲を執拗に確認して、場所にも注意して、万が一見られた時のために言い訳も完璧に用意して。

それなのに、津山くんは軽率すぎる。
冬休み明けの初日に、いきなり教室内で話しかけてきた。その時は何とか誤魔化せたけれど、家に帰ってからメッセージで「学校では話しかけないで」と彼に送って、それからずっとこんな調子だ。
話しかけられてはいない。でも、見られている。ひたすらに。


「でもちょっと可哀想じゃない? ずーっと『待て』くらってる犬みたいだよ、あいつ」

「いいの。『よし』するつもりないから」

「辛辣~」


灯の手前、強気で宣言したはいいものの、正直そろそろ限界だ。何がと言われれば、私の良心が。

さすがに可哀想かな。きつく言い過ぎた。確証はないけど、多分私のことを好いてくれている人に、申し訳ない。
ぐるぐるとそんな気持ちが湧き出てきては、いやいや、これで正しい、だって私は彼に返せるものがないんだから、と意地が前面に出てくる。私は津山くんと違って、中途半端なことはしたくないのだ。

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