ピーク・エンド・ラバーズ
しゃがんで彼の顔を覗き込む。本当に具合が悪そうだ。
となると話は別だな、と自分の中で勝手に結論付けて、津山くんの背中をさすった。
「気持ち悪いの? 吐きそう? 大丈夫?」
「……違、あたま、痛くて」
「そっか。ちょっとごめんね」
彼の後ろに回って、脇に腕を差し込む。そのまま何とか立たせてあげられないかな、と思ったけれど、津山くんが焦ったように声を上げた。
「え――な、に」
「何って、補助。立てる?」
「ま、待って……立つ、立つから……」
私を緩く押し退けて、彼が力なく抵抗する。津山くんはのろのろと立ち上がって、それから縋るようにこちらを見やった。
あー、もう。本当に、あー、もう、だ。
目で喋るのをやめてくれないだろうか。言ってくれないとあんたが何を考えてるのか、何をして欲しいのか分からないじゃん。
でも、あいにく私は、人の気持ちを汲むのが得意な方だ。そして津山岬に関しては、なぜだかいつも彼の求めているものが分かってしまう。
「……肩貸すから、ちゃんと歩いて」
あくまで事務的にそう言い渡し、私は彼のすぐそばに立って腕を引いた。
「いいの?」
「ふらついてるくせに遠慮しない。ほら、もうちょっと体重預けて。しんどいんでしょ」