ピーク・エンド・ラバーズ
無情にも先生は変な気を利かせて、立ち去ってしまった。ぱたん、とドアの閉じた音が、静かな保健室に響き渡る。
どうしよう。それが率直な所感だった。
何となく、津山くんとはこのままではいけないような気がしなくもなくて、しかも異常なまでに見られるから、つい口走ってしまったはいいものの。具体的にどうすればいいのか、どうすべきなのかはまるで見当がついていない。
私は腹を括って、津山くんの横たわるベッドの近くにある椅子に腰を下ろした。
なるべく彼の方は見ない。見てしまうと、捕まってしまうと、逸らし方が分からなくなるから。
「……西本さん、ありがとう」
津山くんは弱り切った声でそう告げた。
うん、と私はそれだけ返して、床に視線を落とす。
「約束破って、ごめん」
「約束?」
彼の謝っている理由が分からず、首を傾げる。
「学校では話しかけないって、約束」
「え――そ、れは、私が先に声掛けたから、」
「うん。でも、ごめん」
何で? そもそも津山くんは私に対して返事をしただけだし、非常事態だったんだからノーカンだし。津山くんが悪い要素も、謝らなければいけない理由も、何一つないのに。
「今だけ、西本さんと話してても、いい?」