ピーク・エンド・ラバーズ
何でそんなに一生懸命、私に媚びるの。
津山くんならわざわざ下手に立ち回らなくたって、いくらでも持ち上げてくれる人はいるよ。私なんかに気力も体力も割く必要、微塵もないよ。
それなのに、どうして。どうして、私なんだろう。
「……体調悪いなら、あんまり喋らない方がいいよ」
「だって、西本さんと話すの久しぶりだから」
「別に……学校ではだめっていうだけで、電話とか、……すれば」
「電話していいの?」
まずい。違う。私が言いたかったのは――というか、望んでいたのはそういうことじゃない。
「だ……だめ。やっぱり、だめ。なし」
必死に訂正して、頭を振る。
冷静に。落ち着いて。津山くんのペースに乱されちゃいけない。私は、彼との関係にしっかりと線を引くために話をしようと思ったんだ。
「何で? 俺、長電話とかしないよ」
「そういう問題じゃないの」
「電話だったら誰にも聞かれないじゃん。……誰にも、邪魔されないじゃん」
拗ねたように付け足された最後の言葉が、僅かに甘さを含んでいて。
認めたくない、受け入れたくない。そうやって突っぱねてきたのを、少しずつ剥がすように侵食していく。
「じゃあ、一個だけ教えて。何であの日、帰っちゃったの」