ピーク・エンド・ラバーズ
ひらひらと紙切れを揺らし、津山くんが朗らかに宣言する。
気分の良し悪しで財布の紐の緩さを操るのはやめた方がいいと思うけれど、私がそれを言っても余計なお世話だろう。
とはいえ、そんな不確かな条件で人に借りを作るのは、私が嫌だ。
「いいよ、払う。どうせ二百円くらいでしょ」
「俺が誘ったんだし、いーよ。こういう時は素直に奢られておくのが吉!」
「当てにならなさそうなおみくじだね」
結局、彼のおみくじ通り、素直に奢られることにした。
あんまり認めたくはないけれど、こういうことをさらりとできてしまうから、津山くんはモテるのだと思う。いや、慣れているだけかもしれない。
店を出ると、外は既に紺色だった。
「西本さん、どこまで歩くの? 駅?」
「うん」
「おっけー」
当たり前のように、彼が私の横に並ぶ。ちらりと横顔を見上げて、尋ねてみた。
「津山くんは、どこまで?」
「俺も駅」
「いつも、バスで来てたっけ?」
私はバス通学だけれど、彼はどうだったか。まあそこまで興味のある話題というわけではなくて、単なる時間つぶし、気まずさ解消だ。
「えー、いや違うけど……さすがに、夜道を女の子一人で歩かせるわけにはいかないでしょ」